AIテニススイング分析:スマホ動画で何がわかり、何がわからないか

PaceのTennisAIチーム · 公開日 · 読了目安 9分

結論

AIテニススイング分析は、コンピュータビジョンで動画の中のストロークを見つけ、体とラケットの動きを読み取って、スコアとフィードバックにします。準備、バランス、おおよその打点など、カメラにはっきり映るものは得意です。ストリングスとボールの当たり方、筋肉の緊張、なぜそのショットを選んだかなど、カメラに映らないものは判断できません。1回のスコアは推定値として扱い、似た条件の動画での推移を信頼してください。

今ではスマホで撮った動画だけで、センサーもコートのコーチもなしに、スイングの自動フィードバックを受けられます。数字で出るので正確に見えますが、その数字をどこまで信じられるかは、カメラに何が映っていたか、そしてどう使うかで決まります。

この記事では、技術の仕組み、判断できること・できないこと、失敗しやすい場面、そして自分のスコアのブレ幅を測る方法を説明します。内容はAIテニス動画分析アプリのTennisAIを含め、どのストローク分析アプリにも当てはまります。

AIテニススイング分析の仕組み

アプリによって違い、詳しい手法を公開していないものがほとんどです。大まかには、ストローク分析は次の3つのステップで進みます。

  1. プレーヤーを見つける。 コンピュータビジョンのモデルが、フレームの中の人を検出します。肩、腰、膝などの関節を推定するシステムも多く、これを姿勢推定と呼びます。
  2. ストロークを見つける。 時間の流れに沿って動きを追い、「ここはフォアハンド」「ここはサーブ」とラベルを付けます。
  3. 動きをフィードバックにする。 見た動きを、テニスの技術について学習した内容と比べ、スコアとコメントを出します。

異なる2つの仕事が、同じ名前で呼ばれることがよくあります。スイング分析は、体とラケットを見ます。ショットトラッキングは、ボールを追って、スピード、深さ、インかどうかなどを報告します。TorqAIの掲載情報では、17の関節を追跡するとされています。ITF(現World Tennis)のレポートには、SwingVisionがラケットのヒット、ネットへの接触、バウンドの時点での3Dのボール位置を測定する、と書かれています。SwingVisionのサイトには、Proプランに技術のレビューがあることも載っています。TennisAIは自分の役割を簡単に、AIがストロークを分類し、スイング軌道、タイミング、打点、フットワークなどにスコアとフィードバックを出す、と説明しています。アプリを選ぶなら、まず何を分析するかで比べましょう。

スマホ動画でAIが判断できること、できないこと

この表の基準は単純です。フレームの中で自分に見えないものは、AIにもほとんど手がかりがありません。

知りたいことスマホ動画から理由
準備が早いか遅いか多くの場合わかるバウンド時の体とラケットの位置は、横やコーナーからなら見やすいため。
フットワークとバランス多くの場合わかる全身がフレームに収まっていれば、足元とフィニッシュが見えるため。
下から上へのスイング軌道横からならわかる横からはラケットが上昇する様子が見えます。真後ろからだと平らに見えます。
打点おおよそ30fpsや60fpsでは、インパクトのちょうどその瞬間のフレームがないことがよくあります。
グリップとラケット面の角度精度が低いことが多い小さくて速く、通常の撮影距離ではぶれてしまいます。
ボールがストリングスのどこに当たったかほとんどわからない通常の動画ではまず見えません。ラケットセンサーの最もはっきりした強みです。
パワー間接的にカメラは力を測れません。パワーについてのコメントは、見える動きからしか出せません。
緊張、疲労、痛みわからない体の内側で起きることです。動画からけがを判断できるアプリはありません。
なぜそのショットを選んだかわからないカメラが見るのはストロークです。あなたの狙いは知りません。

コメントは、自分で確かめられるときに最も役立ちます。たとえば打点が遅いと言われたら、動画をインパクトに最も近いフレームで止めて見てください。各ストロークの打点がどこにあるべきかのガイドで、見るべきポイントがわかります。

AIスイング分析が間違える場面

カメラによる分析は、見える角度に左右されます。私たちが読んだ独立した検証は別種の製品のものですが、査読付きの研究が、SwingVisionのデータを人間のアナリストと、4試合、2つのカメラ角度、1,065ストロークで比べています。ほとんどの変数で一致度は高く、より良い角度のほうが近い結果でした。著者は、角度に関連する誤差についても注意を促しています。スイング分析も、角度に敏感だと考えるのが妥当です。

問題分析への影響対処法
悪い角度遠い位置や真後ろからだと、打点とスイング軌道が見えない。真横かコーナーから撮り、毎回同じ場所を使う。
何かが遮っているネットポスト、フェンス、パートナー、自分の体が、肝心な瞬間にラケットを隠す。テスト動画を確認し、インパクトまでラケットが見える位置にスマホを動かす。
暗い場所iPhoneは暗いと24fpsまで下がることがあり、速いスイングがぶれる。明るい場所で撮り、「設定」「カメラ」「ビデオ撮影」でオートFPSを確認する。
他のプレーヤーが映っている自動システムは誰が何をしているか混同することがある。フォーム用の動画では、自分が画面で最も大きく映るようにする。
1本の動画、1つの調子調子の良い1分や落ち着いた練習が、プレー全体として扱われる。多くの本数を撮り、ポイント練習の動画も加える。

カメラ位置とスマホの設定は、テニス動画の撮り方ガイドで詳しく説明しています。

AIテニススコアの読み方

  • 絶対値より推移。 6.8という数字だけでは、ほとんど何もわかりません。似た動画を重ねて、あるストロークが上がっていく方が、はるかに多くを語ります。
  • 同じ条件同士で比べる。 同じストローク、同じカメラ位置、同じ種類の練習で比べます。試合の動画と練習メニューの動画は、別のテストです。
  • 友だちとは比べない。 カメラも練習内容も違うので、小数第1位で数目盛り程度(0.数点)の差にはほとんど意味がありません。
  • レーティングとは考えない。 技術スコアは、1本の動画でストロークがどう見えたかを表すだけで、誰に勝てるかは示しません。TennisAIのNTRPとUTRの数値は、動画分析からの推定値で、公式ではないと表示されています。

再撮影テスト:どこまでが本当の変化か

このテストは1回の練習で、プレーが何も変わっていないのにスコアがどれだけ動くかを示してくれます。動画にスコアを付けるアプリなら、どれでも使えます。

  1. いつもの場所にスマホを固定し、1つのストロークを数分撮ります。たとえば安定したラリーでのフォアハンドです。
  2. 少し休憩し、同じ場所から同じストロークをもう一度撮ります。何も変えません。
  3. 2本をアップロードして、そのストロークの2つのスコアを書き留めます。
  4. 2つの差があなたのブレ幅です。その後の変化がこの差より小さければ、変化なしとして扱います。

同じ練習の2本の動画が7.1と7.5だったとします。翌週に7.1から7.3に上がっても、まだ何も意味しません。差より大きな上昇が3回の練習で続くなら、信じる価値があります。これらの数字はあくまで例なので、自分の数字でテストしてください。カメラを動かしたら、もう一度やり直しましょう。

1つのコメントを練習につなげるには

  1. 最もポイントを失っているストロークのコメントを1つ選びます。他のストロークのスコアのほうが低くても構いません。
  2. 動画で確認します。問題が見えなければ、そのコメントは推測として扱い、別の動画を見ます。
  3. 数えられる形にします。打点が遅いなら、フォアハンドを20本撮って、ボールがバウンドした時点でラケットがすでに戻っている回数を数えます。
  4. その目標で練習し、次の練習で同じメニューを撮って、また数えます。

テニスの動画フィードバックについて研究は何を示しているか

研究結果は割れていて、対象はAIスコアではなく、動画フィードバック全般です。古い2つのサーブの試験では、追加の効果は見られませんでした。初心者を対象にした1985年の研究では、5回の練習で動画の手法に明確な優位性はありませんでした。中級者66人を対象にした1989年のランダム化研究では、動画フィードバックは従来のトレーニングより優れていませんでした。

新しい研究はより前向きですが、範囲は狭いものです。中級者23人を対象にした2024年の研究では、動画フィードバックを受けるタイミングを自分で選んだ人のほうが、決まったスケジュールの人より戦術面の成績が伸びました。測ったのは戦術で、フィードバックを与えたのはコーチでした。学校の体育における11件の研究の系統的レビューでは、動画フィードバックは効果的に見えるとされましたが、テニスに特化したものではありませんでした。

つまり研究は、動画やAIスコアだけで技術が上達するとは示していません。動画がはっきり得意なのは1つです。自分が実際にやっていることを見せてくれます。それは感覚と違うことがあります。

アプリより人を信頼すべきとき

アプリが見るのは、1本の動画の1つの角度です。良いコーチは、いろいろな側から見て、グリップの握りを手で直し、あなたの経歴を覚えています。始めたばかりのとき、大きな技術変更を計画しているとき、フィードバックに戸惑うときは、コーチに相談してください。両者の比較はAIテニスコーチと人間のコーチにあります。どこかが痛むときは、やめて専門家に診てもらいましょう。

よくある質問

AIテニススイング分析はどのくらい正確ですか?

アプリ、カメラ角度、明るさ、動画内のストローク数によります。私たちが読んだ独立した検証はSwingVisionのもので、ほとんどの変数で人間のアナリストと高い一致を示し、より良い角度のほうが近い結果でした。同じ練習で同じストロークを2回撮れば、自分のスコアのブレ幅を見積もれます。

スマホ動画からAIはテニスのスイングを分析できますか?

できます。ただし全身とラケットが、安定して明るいフレームに収まっていることが条件です。準備、フットワーク、バランスは得意で、グリップやラケット面の角度のような小さく速い細部は苦手です。

AIテニス分析で良いスコアとはどのくらいですか?

アプリごとに採点方法が違うので、共通の基準はありません。同じカメラ位置で撮った、自分の過去の動画とだけ比べてください。

動画分析でテニスは上達しますか?

研究結果は割れています。古いサーブの試験では、従来のトレーニングに対する動画の追加効果は見られず、新しい研究は前向きですが範囲は狭いものです。動画は自分が実際にやっていることを見るのに役立ちますが、上達はその後の練習から生まれます。

AIはテニスコーチの代わりになりますか?

なりません。AI分析はレッスンの合間のフィードバックにはなりますが、見えるのは1本の動画の1つの角度だけです。コーチはグリップを手で直し、いろいろな側から見て、上達に合わせて計画を変えられます。

自分のプレーで確かめてみよう

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参考資料

  1. IDEAS/RePEc:SwingVisionと人間のアナリストを比べた査読付き妥当性検証(2024)
  2. ITF:Player Analysis Technology approval report for SwingVision (PAT-25-037)
  3. AP via WTOP:国際テニス連盟(ITF)がWorld Tennisに改称
  4. SwingVision:公式サイト(プラン)
  5. App Store:TorqAI: Tennis Swing Doctor
  6. Apple:iPhoneのビデオ撮影設定を変更する(Change video recording settings on iPhone)
  7. PubMed:Emmen et al. 1985, video-modelling and video-feedback in learning the tennis service(初心者)
  8. PubMed:Van Wieringen et al. 1989, video-feedback in learning the tennis service(中級者)
  9. PubMed:van der Meer et al. 2024, self-controlled video feedback and tactical skills in tennis
  10. KIT:Mödinger, Woll & Wagner 2022, video-based visual feedback in physical education(系統的レビュー)

この記事はテニスのトレーニングに関する一般的な情報であり、コーチや医師のアドバイスに代わるものではありません。痛みがあるときは中止して、専門家に相談してください。TennisAIは、このブログの発行元であるPaceが開発しています。

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